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もし芸人に不思議な力があったら5

1 :名無しさん:2006/08/25(金) 14:46:09
現まとめサイト
ttp://geininstone.nobody.jp/


・芸人にもしもこんな力があったら、というのを軸にした小説投稿スレです
・設定だけを書きたい人も、文章だけ書きたい人もщ(゚Д゚щ)カモォン!!
・一応本編は「芸人たちの間にばら撒かれている石を中心にした話(@日常)」ということになってま


・力を使うには石が必要となります(石の種類は何でもOK)
・死ネタは禁止
・やおい禁止、しかるべき板でどうぞ
・sage必須でお願いします
・職人さんはコテハン(トリップ推奨)
・長編になる場合は、このスレのみの固定ハンドル・トリップを使用する事を推奨
 <トリップの付け方→名前欄に#(半角)好きな文字(全角でも半角でもOK)>
・既に使用されている石、登場芸人やその他の設定今までの作品などは全てまとめサイトにあります。
書く前に一度目を通しておいてください。


2 :名無しさん:2006/08/25(金) 14:46:59
以下はスルーしても構わない設定です。
・一度封印された石でも本人の(悪意の無い)強い意志があれば能力復活可能。
 暴走する「汚れた石」は黒っぽい色になっていて、拾った持ち主の悪意を増幅する。
 封印されると元の色に戻って(「汚れ」が消えて)使っても暴走しなくなる。
 どっかに石を汚れさせる本体があって、最終目標はそこ。

・石の中でも、特に価値の高い(宿る力が高い)輝石には、魂が宿っている
 (ルビーやサファイヤ、ダイヤモンド、エメラルドなど)
 それは、古くは戦前からお笑いの歴史を築いてきた去る芸人達の魂の欠片が集まって作られた
 かりそめの魂であり、石の暴走をなくす為にお笑い芸人達を導く。

・石の力は、かつてない程に高まった芸人達の笑いへの追求、情熱が生み出したもの。
 持ち主にしか使えず、持ち主と一生を共にする(子孫まで受け継がれる事はない)。

・石の暴走を食い止め、封印しようとする芸人たちを「白いユニット」と呼ぶ。
 逆に、奇妙な黒い欠片に操られて暴走している芸人たちを「黒いユニット」と呼ぶ。
 (黒い欠片が破壊されると正気に戻る。操られている時の記憶はなし。)

前スレ
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1137670906/

3 :名無しさん:2006/08/25(金) 14:47:52
これで大丈夫ですかね。
落ちていたようですが
誰も立てないので立てました。

4 :名無しさん:2006/08/25(金) 15:05:06
>>1
乙です!
今はホスト規制が厳しくなってるみたいだ

書き手さんたちの投下期待してます!

5 :優しい名無しさん:2006/08/25(金) 15:53:10
乙です
ありがとう。ここ数ヶ月1度もスレ立てれてないや。

6 :名無しさん:2006/08/25(金) 15:58:26
>>1
乙です。

7 :名無しさん:2006/08/25(金) 16:25:38
>>1
乙です!

8 :名無しさん:2006/08/25(金) 18:20:03
>>1
乙華麗

9 :名無しさん:2006/08/25(金) 23:29:45
>>1
おぉ新スレ立ってる!
乙です!

10 :名無しさん:2006/08/26(土) 10:01:11
昨日ここにたどり着いて今日初カキコ。初めまして。
あー渡部と上田と柴田が活躍してると嬉しいね(ゲバルトファン)
書いてる人みんな想像力豊かだな、文章上手いし

うおー続きが気になる!イイ!


11 :名無しさん:2006/08/26(土) 14:50:13
>>10
さげようぜ!

>>1
乙華麗

12 :名無しさん:2006/08/26(土) 16:01:18
即死回避

13 : ◆vGygSyUEuw :2006/08/26(土) 17:04:50
>>1さん乙です!
新スレ保守がてら東MAXの話投下。

14 : ◆vGygSyUEuw :2006/08/26(土) 17:05:23
男が一人、走っていた。
何かに追われているような顔で、ちらちらと後ろを振り返る。
実際には、男を追って走る影はない。…ように思えるのだが。
夜更けの繁華街は、独特のネオンや雰囲気が五感に刺す。
行き交う人々は男のことなど気にも留めずに、時折ただ不審げに一瞥した。
そのことに憤る余裕もなく、とにかく男は走っていた。
大通りを横切り、路地裏に入って、やっと一息つく。
手近な外壁にもたれ、乱れた息を整えて、不意に夜空を仰いだ。
「…あーあ。」
嫌気の差したような呟きに、心底からの重い重いため息が続く。
ビルの陰となっている筈なのに、男…東貴博の周囲には、確かに淡い光があった。

なぜ自分が夜の街をこうも全力疾走しなければならなかったのか、東は思い返していた。
時計を見る。たしか、20分ほど前。
仕事が終わって、さて夕食でもと思いテレビ局を出た、途端。
目の前に唐突に若い男が現れた。
あれいつのまに、と思うのと同時ぐらいに、男が動いた。
指からペンライトのように細く青い光が飛んできて、左肩に当たる。
肩自体は何ともなかったが、一瞬で体が氷水でも浴びたように冷えた。
え、今、真夏だろ?
「おとなしく、石を渡してください」
妙に平坦な発音で言われた。寒さと不安で膝が震える。
男が更に迫ってくる。じゃり、という足音に、反射的に体が動いた。
とにかく叫びながら、死にものぐるいで走ったら、どうやら逃げられたらしい。
以上、回想終わり。…って、何の手がかりにもならないじゃないか。
一人で思考に突っ込むと、またため息をつく。
あの光が何だったのか…実はわざわざ推理しなくてもいいほどに明白だった。
ただ、信じたくなかっただけで。
幸い今は特に肩に異常はない。痛くもなく、服すら破れていない。
走ったおかげで体もあたたまった。しかし我ながらよく逃げ切れたものだ、と思う。
こんなに動いたのも久々で、急に明日の体が心配になってきた。筋肉痛は確実だろう。

15 : ◆vGygSyUEuw :2006/08/26(土) 17:06:02
「…あーもうやだやだ」
とひとりごちて、そろそろ帰っても大丈夫だろうかと外壁から身を起こしたとき、
『…にげて』
そんな微かな声と共に、突然ポケットから警告のように光があふれる。背中がぞくりと粟立った。
不格好ながら飛び退くと、地面を伝って帯状の青い光が来た。
ちょうど、先ほど立っていた辺りに薄く広がって、消える。
振り返ると、さっきの男がいた。
「…反射神経いいんすね」
無表情で言う。さっきと同じように指を差す格好をしていた。
ごくりと唾を飲む。人気のない路地裏は、かすかに生ゴミのような臭いがした。
誰かが颯爽と助けに来てくれる訳のない以上、火の粉は自分で払わなくてはいけない。
「ねえ、穏便にお金で解決とかさ、そういうわけにはいかない?」
我ながら脱力する提案をしてみたところ、相手も少しは気が抜けたようだった。
というより、呆れた、か。
「個人的には魅力的ですけど、バレたらやばいんで」
「…君も結構な返事するねえ。」
「お互い様っすよ」
「俺、戦う気ないんだけど」
「俺は、戦わない気はないです。」
言いながらも、もう片方の拳から青い光がのぞく。微妙に黒がかっていて、薄ら寒かった。
好戦的とも言い難い白くぼーっとした顔に、物騒な色はない、が。
たぶん今の自分は、嫌悪に近い目をしているだろう。
しかし目の前の男は、目に光がない。どっちもどっちだ。
「ああ、嫌だ嫌だ。」
もう一度言ってから、拳を握る。
上手く笑えていないのは分かっていた。
戦いたくないから、頑張って逃げたのに。
何で終わってくれないんだろう。

16 : ◆vGygSyUEuw :2006/08/26(土) 17:06:41
「…うわっ!」
前触れもなく、青い光が飛ぶ。
避ける。また飛んでくる。また避ける。
低い姿勢を取っていたものだから、半ば転がるようになった。
ちょっとやめてよ、この服気に入ってんのに。
そう言う余裕も与えずまた光が飛ぶ。短い悲鳴をあげてぎりぎりで避ける。
ああ、ちょっと無様かも。
そう思いながらも、続けて撃たれた際どいコースを避ける頃には、こちらももう開き直っていた。
ちっ、と舌打ちをして、男が手を開く。
さっきよりも広範囲の光を何とか避けて、這いつくばるように地面に手を突いた。
ちょうどそこは、さっき光の当たった所だったらしい。駆け上る冷たさに、ばっと身を起こす。
すぐさま汚れた手と服を払って、呼吸を整えた。
「よく避けれますね」
「…いくら夏とはいえ、凍りづけにされるのは正直遠慮したいからね。」
向こうも息を乱している。手がパーだとそう乱発はできないらしい、いいことを知った。
「…何で能力出さないんですか」
「何で戦わなきゃいけないの」
言うと、男の眉間に皺が寄った。
その目に、ぐっとこみあげてくる思いがあった。
「何で、芸人が戦わなきゃいけないのさ」
冗談じゃない、勘弁してくれ、もうごめんだ。
そう遠くない昔に強く強くそう思ったことがあった気がする。
おぼろげな感覚しか残っていないけど、でも、覚えがある。
何とか浮かばせようとするとずきずきと頭が痛んで、思い出そうとするのをやめた。
額を片手で押さえて、大きく息を吸い込んだ。
ああ、何でか今の俺には何にもわかんないけど、
確かにそう喉が嗄れるぐらい叫んだことがあったんだ。

17 : ◆vGygSyUEuw :2006/08/26(土) 17:07:24

一瞬だけ瞼の裏に投影された静止画は、次の瞬間にはもう何だったかもわからなかった。
ただ、誰かが黙って泣いてる気がした。
だから俺は、静かに構えて、人を笑わせるための言葉を言った。
「…東MAX!!」
突き抜けていくX型の光線は、人を泣かすかもしれない奴に届いた。


「…大丈夫?」
「なんとか…」
目が眩んでつぶっていた瞼を開くと、男は仰向けに倒れていた。
おかしいな、俺のはそう強くないはずなのに。
怖々歩み寄って声をかける。あまり顔色がよくなかった。
「俺の能力…使いすぎると熱出るんすよ」
なるほど。道理で弱い衝撃波でも倒れる筈…って、
「敵にそんなの教えちゃっていーの?」
「…東さん、『白』じゃないでしょう」
だから、とあんまり返答になっていないようなことを言うと、男はよろよろと起きあがった。
咄嗟に身構えると、苦笑いを浮かべて手をひらひら振る。
「もうそんな気力ないっすよ。
 また誰か来るかもしれませんから、せいぜい気ぃつけといてください。」
じゃ、と言うとおぼつかない足取りで男は立ち去る。
しばらくはあっけに取られていたが、はっと我に返る。
黒には珍しい人種じゃないか、あれ。

路地裏から出ると、ネオンの強い光が眩しかった。
手を洗いたいなと思う。できれば風呂にもゆっくり浸かりたい。
ゴミの臭いが移っていないか心配になって袖を嗅ぐ。薄汚れてはいたが、普通に洗剤の匂いがした。
時計を見ると局を出てから一時間近く経っていた。
空腹だったことに気付いて、辺りを見回す。

18 : ◆vGygSyUEuw :2006/08/26(土) 17:08:35
生憎その通りには飲み屋ぐらいしかなかったが、馴染みの店が近い筈だ。
何を食べようかと考えながらふとポケットに手を入れると、でこぼこした固い感触があった。
久々にその力を使った乳白色の石を、労るように指先で撫でる。
スティルバイト、とか言ったっけ?
和名は束沸石。白、黄色、ピンク、褐色などが多い。
束ねてぎゅっと絞ったように独特な形をしている。高度はあまり高くなく、脆い。
去年の秋頃この石を拾ってから無意味に増えた石の雑学を引っ張り出してくる。
急に頭の中で声が聞こえたりし始めた時には何事かと思ったけど、もう慣れた。
使い方は少しずつ、それこそ週一で戦ってるような人なんか呆れそうなペースで覚えてる。
今日みたいに襲われるのは珍しいけど、最近なんか激しくなってるらしいし。
やっぱり誰かと一緒に帰ろうかなあ?
そんなことを暢気に考えながら、ゆっくり歩いて店へと向かう。
その横顔はきっといつもの自分に戻っている筈だ。
それでいい。この顔のまま過ごせる日が続けば。

数えるほどしか戦っていない男の腕は、他の誰かより確かに弱いだろうけど、
少なくとも道ばたに倒れる気はないからね、と心中で誰へともなくうそぶいてみせた。
この顔のまま過ごせる日を、守るために。

「…でもほんと、戦うのやなんだけどなあ」
小さな声でぼやくと、同意するようにくすくすと笑う声が聞こえた。

19 : ◆vGygSyUEuw :2006/08/26(土) 17:11:38
東貴博(Take2)
石:スティルバイト(人格形成の基盤・富んだ思考)
能力:目の前にX型の光線?を放つ。
障害物はすり抜けるが、放たれてから50〜100m程で消える。
当たっても対して痛くないため、気づいたときにはダメージが蓄積していることも。
また、気合いの入れ方によって燃える光線を打ち出すこともできる。
条件:両腕を胸の前でクロスさせ、大声で「東MAX!」と叫ぶ事。
本人のやる気がないとき、気合いが足りないとき等は
威力が落ち、最悪の場合発動できなくなる。

以上です。
能力は提案スレ180さんのを使わせてもらいました。

20 : ◆vGygSyUEuw :2006/08/26(土) 17:16:25
あ、もうスティルバイト使われてましたね…。
確認しとけばよかったorz
申し訳ありません、これは番外編扱いでお願いします。

21 :名無しさん:2006/08/26(土) 22:15:33
乙です!
こんな名作で番外編はもったいないので、
したらばにでも石の別候補を上げて本編化キボン

22 :名無しさん:2006/08/27(日) 00:30:00
既出のスティルバイトはアイボリー(象牙色)、今出てきたのは乳白色。
気になって調べたら違う色だったんで、〜スティルバイトと
頭に色名をつければ大丈夫でないかと言ってみる。

自分も、これが番外はもったいないと思う。

23 : ◆vGygSyUEuw :2006/08/27(日) 08:45:55
>>21>>22
優しいお言葉ありがとうございます。
では「ホワイトスティルバイト」ということで大丈夫でしょうか。
無理なら代わりになる石を探してきます。

襲ってきた男
能力:石の光を冷気として放出する。
条件:温度を下げるほど、また対象の範囲が広がるほど負担がかかる。
また、使いすぎると体温が上昇し、風邪に似た症状が出る。

24 :名無しさん:2006/08/28(月) 02:45:43
保守sage

25 :名無しさん:2006/08/28(月) 04:05:06
>23
いいとオモ

26 :名無しさん:2006/08/29(火) 12:13:02
age

27 :名無しさん:2006/08/29(火) 14:26:40
乙です。
とても面白かったです。
確かに番外編はもったいないと思います。

28 : ◆8Y4t9xw7Nw :2006/08/29(火) 17:09:00
パソが見事にデータを吹っ飛ばしまして、書き直してましたが、
ようやく投下できる状況まで復旧できました。
前回から半年近く経ってしまいましたが、南キャン編の続きです。

29 :名無しさん:2006/08/29(火) 17:14:10
幕間〜夢〜

――誰だって自分の無力さを知りたくはない、のに。

耳を叩く微かな風の音に、山里は重い瞼を開いた。
薄暗い白に染まった視界に一瞬混乱した後、
自分が雪の中に半分埋もれているのだと気付く。
随分と長い間倒れたままだったのか、冷たさも痛みも通り越し、
痺れたような感覚が全身を支配していた。
身体は鉛のように重く、起き上がる気力さえ湧かない。
寒さのせいなのか、頭の回転も酷く鈍かった。
ここがどこなのか、自分が何をしていたのか思い出そうとするのだが、
自分自身でも苛々してくる程に何も浮かばない――
まるで、頭の中までこの重苦しい白に、塗り潰されたような。
ただ朧げに、ここに来た覚えがあるという事だけを思い出す。
記憶を辿る事を早々と放棄した山里は、視界を覆う白から
少しでも逃れようと、ほとんど感覚のない右手を
のろのろと動かし、レンズに張り付いた雪片を払う。
だが、目に映る風景は少しも変わらなかった。
恐らく夜なのだろう、辺りが酷く薄暗い中、微かな光を反射して
鈍く光る、一面の白。
(――――)
なぜだか、ぞわりと背筋を悪寒が伝った。酷い圧迫感を感じ、
冷え固まった足や腕を半ば無理矢理動かして、身体を丸める。
遠慮なく心の奥に踏み込まれる事に比べれば、一人で居る事の方が
ずっと楽なタイプだと、そう思っていたけれど――この場所は。
誰も居ない。何もない。ただ、ひたすらに、白いだけの空間。
どうして恐れるのだろう。そんな必要は、ないはずだ。
この場所を、望んだのは自分自身なのだから。
――あぁ、そうだ。望んだのは自分だ。
空白に近い記憶の中に、それだけが余りに唐突に浮かび上がった。
けれどその不自然さには気付かずに、山里はぼんやりと考えを巡らしていく。

30 : ◆8Y4t9xw7Nw :2006/08/29(火) 17:15:35
全てから逃げ出したくて。そう思う自分自身が酷く嫌で。
いっその事全て閉じ込めて、凍らせてしまえば。
――傷付かずに済む、ような気がして。

白い粉雪は音もなく、腕に、足に、頬に降り積もっていく。
ほんの少しの蟠りが、まだ残っていた。
けれど、自分を埋めようとする雪に抗おうという気は起きない。
もう、疲れた。
『――――!』
不意に、ノイズのように続いていた風の音が薄れ、代わりに耳に届いた
微かな声に、山里は閉じ掛けていた瞼を再び開いた。
何を言っているのかまでは、聞き取れない。けれど、呼ばれているような気がした。
聞き覚えがある。この声を、確かに自分は知っている。
ちらちらと脳裏を掠める、ぼんやりとしたイメージ。
誰かの首元、ひらひらと揺れている、あれは――。
「…………」
無意識に口に出そうとした言葉が、喉に詰まる。
なぜだろう、今まで何度もこの言葉を叫び掛けたような気がする。
――言ってはいけない。決して言ってはいけない。
その言葉だけは。己の弱さを認めるような、そんな言葉は。
既視感に似た感覚と同時に、理由もなくそんな思いが湧き上がる。
けれど、浮かび上がった言葉はそれ以上の強さで心を占めていく。
ぼんやりとしていたイメージを、やっと捉える事が出来た。
首元で揺れるスカーフを押さえて、空から舞い降りてくる鳥に、手を差し伸べているのは。

31 : ◆8Y4t9xw7Nw :2006/08/29(火) 17:16:10
「…………しず……ちゃ…………」
――言ってはいけない。言っては――。
「…………た、す……け…………て…………」
再び聞こえ始めた風の音に掻き消されながらも、今度ははっきりと届いた。
自分を呼ぶ、声。

『――山ちゃん!』

その瞬間――何かが軋んで割れるような微かな音が、聞こえた。

あぁ――この場所には、もう、来ない。

32 :名無しさん:2006/08/29(火) 17:18:08
すいません、短いですが、今日はここまでです。
予定通りならあと2回、のはずですが……よろしければお付き合いください。

33 : ◆8Y4t9xw7Nw :2006/08/29(火) 17:20:14
よく見たらトリップミスしまくりですねorz
>>29>>32はもちろん私です。ご迷惑おかけしました。
ほかの書き手さん達の作品も楽しみにしてます。

34 :名無しさん:2006/08/29(火) 17:56:31
でっかい天使キター!!
乙です!

35 :名無しさん:2006/08/29(火) 20:54:12
キタ━━━━━━ !!!!
南キャン編、マジでずっと楽しみにしてました!
続きwktkしながら待ってます

36 : ◆L2gLDbsqeY :2006/08/29(火) 21:56:52
はじめまして。
麒麟の川島と次長課長の井上の話を投下させていただきます。

37 : ◆L2gLDbsqeY :2006/08/29(火) 21:59:29

君に捧げる青い春

「…井上さん」
「しゃべっとらんと手ぇ動かしぃ」
「いや、あのすいません、これ途中で終わらせてくれませんかね?」
川島の手にはゲーム機のコントローラー
目の前にあるテレビの画面には2次元のキャラクターが肉弾戦を繰り広げている。
たまに、手から炎が出たり竜巻が起こったりするのは
ここ数ヶ月間自分の目の前で似たようなことが起こってるなというのをどこかでぼんやり思った。

「そうやな、お前が俺を超えたら終わらせたるわ」
「無理です、井上さん強すぎます。」
「何やの、お前最近付き合い悪いから絶対自宅でゲーム特訓しとるもんやと思ってたのに…
むしろ前より弱くなっとるやん」
「まぁ、最近別件で忙しくって…ろくにゲームも触れてなかったんで」
「だから、俺が今ここでその弛んだゲーム根性叩きなおしたる」
「それって叩きなおすものですか?」
苦笑を浮かべながら川島は先ほど井上から課せられた対コンピューター100人抜きの37人目の対戦相手に必殺技をくらわせた。
「そういや、河本もぼやいとったわ。『最近みんな付き合い悪ぅなって飲み会誘っても誰ものってこん』て」
「そう、ですか」
「何なん?そういうの最近流行ってるん?」
その質問に対して川島は曖昧に笑ってかえすしかできなかった。

38 :名無しさん:2006/08/29(火) 21:59:50
復旧おめでとうございます。ほんとに乙でした!
8Yさんの南キャン、やっぱり最高です。次回も楽しみにしております。

39 : ◆L2gLDbsqeY :2006/08/29(火) 22:00:56
次長課長の井上は彼らがまだ大阪にいた頃大変世話になった人物である。
相方である田村の次に川島に声をかけてくれて極度の人見知りであった川島を変えてくれた大きな要因だ。
以前は仕事で東京に来た際には、ほぼ毎回といっていい程井上とこういったゲームで遊んでいた。
しかし、黒水晶を手にして以来、黒ユニットの芸人に幾度となく襲われ
否が応にも戦いに巻き込まれる事となって彼らの周りの環境は一変した。
どうやら思っていた以上に「石」は芸人の間に広がっているらしいが
幸いにもこの先輩はまだ石を持っていないらしい。
こんな無意味な戦いに自分にとって大切な人達を巻き込みたくない。
だからしばらく相方である田村にも「石」の事は語らなかった。
しかし、その相方も石の力に目覚め「一緒に戦う」と力強く言ったのはつい最近の事だ。
だが、一方で川島は考えていた。
田村の石が完全に覚醒した今ならその力を封印できるのではないかと。
今からでも遅くない、戦うのだけは自分だけでいい。
あまつさえ田村の石を覚醒させるに至ってしまった自分に少し憤りさえ感じていた。

40 : ◆L2gLDbsqeY :2006/08/29(火) 22:06:11
そんな中東京での仕事を終えた麒麟の楽屋前に突然現れた井上に驚いていると
「川島、ちょっと来い」の一言を投げかけられた
ついていった先は久々に訪れた井上の自宅。
そして自分もまだ購入していないゲームでいきなり100人抜きという課題を与えられ現在に至るという。
いくら突拍子な言動をする井上の事とはいえ、いきなりすぎないか…
そんな事を思い返しながら、慣れないキャラを動かしていると急に目の前の画面が一時停止した。
ゲームを停止させた張本人、井上は頭をかきながら目を泳がしながら何かぶつぶつ呟いた後川島の方に向き直った。
「川島お前や、昔っから厄介ごと一人で抱え込むんクセやな」
「えっ?」
「別にそれが絶対にアカンって言っとる訳やないけどや…
お前が思っとる以上にお前の事心配してる奴おるんやから…」
「心配…俺なんかの…ですか?」
「なんかとか言うなや。お前いっつもそうやって自分卑下して…今後そういう態度禁止!これは先輩命令や」
「いや、これはまぁ、性格上の問題なんで…まぁ極力改善していくようにはしていきますよ」
「じゃあ、今ここでお前が何を抱え込んで悩んでるんかをさぁ、言え、今すぐ言え」
「今すぐって、何ですか?刑事と犯人のコントやないんですから」
笑いながらも内心川島は焦っていた。
妙な所で勘のいい井上に誤魔化しがきくだろうか。
だからといって正直に全てを話すという事もできるはずがない。
川島が思考の海に沈みかけた時だった。

「石…の事?」

井上の口からその単語が飛び出た瞬間川島は自分の心臓が一際はねたのを感じた。
心臓の脈打つ音が耳元で大きく聞こえる。
石の噂が芸人の間で広まっているならそれが井上の耳に入っていてもおかしくはない。
だが、川島に対して石の事を切り出すという事はすなわち少なからずとも川島の現状を把握した上での事。
川島はポケットに忍ばせている黒水晶を握る。
だが黒水晶は共鳴すらもせずひたすら沈黙を守っている。

41 : ◆L2gLDbsqeY :2006/08/29(火) 22:08:45
石をもっていない、しかし黒い欠片に操られている気配すらない。
「どうして、いきなりそんな事聞いてきはるんですか?」
一気に乾いた喉から出る声は弱冠かすれてはいたが、極力平静を川島は装った。
「どうしてって、どうしても川島が何もいわんかったらこう言えって田村が…」
「は?田村?」
「あー、そういや俺の名前は出さんで下さいーみたいな事言うとったな…
でも、もう言うてもうたし…別にえぇか」
井上の口から飛び出た田村の名前に先ほどまでの井上の行動に合点がいき
一気に緊張感がとけ笑いがもれてしまう。
「ははっ、はははっ…あー、そういう事ですか…アイツに頼まれたんですか?」
「まぁ…川島が元気ないから励ましたってくれって…」
「やっぱりな…すいません井上さん。いらん迷惑かけて。」
「迷惑とかこっちは思ってへんよ。俺かて最近お前の様子おかしいとは思っとったし…
何とかしたいとも思ってたんはあったし」
「ほんま下らん事先輩に頼むなやアイツ」
ぼそっとつぶやいた川島の一言に井上は叫んだ。
「下らん事ちゃうわ。田村はお前の事本気で心配しとったんやで!」
突然の剣幕に川島は言葉を失う。

42 : ◆L2gLDbsqeY :2006/08/29(火) 22:11:23
「なぁ、相方ってのは何でも話せて、心から信頼しあって、
どんな時でもお互いの事を気遣って支えあう存在ちゃうん?
俺にとってはそれは河本で、川島にとってのそういった存在が田村やろ?」
そんな井上の言葉にいつだか田村のいった言葉が蘇る。

『俺ら二人で麒麟やろ!』

「信頼…」
川島の脳裏に二人で戦った時の記憶が蘇る。
何も言わなかったのにお互いわかりあえて、
ただ側にいただけなのにどこか心強かった。
一人の時には感じなかった安心感。
どこかでわかっていたはずなのに気づこうとしなかった。
それを気づかせてくれたのは目の前の先輩の言葉。
川島は改めて井上の何気ない偉大さを思い知った。

「とにかく俺が言いたいんは、もっと田村とか俺とかbaseの奴らとか、
そういった人らを頼っても全然構わへんねんで」
「いいんですか?頼ったりして」
「おう、いつでも大歓迎や」
「ありがとうございます。」
川島のそのセリフは目の前にいる先輩に対してそして、
おせっかいにも余計な気を回してくれた相方に対しても
心の中で同様の言葉を投げかけた。
そう言っただけで川島は自分の中の渇いていたものが急速に潤っていくのを感じた。

43 : ◆L2gLDbsqeY :2006/08/29(火) 22:13:04
「井上さん」
「ん?」
「今はまだ、何も言えません…でも、全部終わったら必ずなんもかも話します」
「それって、いつになるん?」
「そうですね…ちょっと前まではまだかなりの時間がかかる思ってましたけどでもこれからは相方を、
田村の事を頼るんでそんな遠い事やありません。」
今までは先の見えない戦いだったはずなのにどこかそんな事を思えるようになった。
「ほっか…川島、お前さっきよりえー顔しとるで」
「井上さんのおかげです。いつか、全部終わったら話しますからそれまで待っててください」
いつか全部、黒や白の争いがなくなりこの戦いが終わった後
全てが笑い話で話せる時が来ることを信じているから、その時に全て。

「ところで井上さん、俺明日、朝一番の新幹線で大阪帰らなあかんのですよ。
やからもう帰ってええですかね?」
「川島、お前下段の攻撃に甘いねん、ほら」
「えっ?途中乱入?!てか終わらせてくれないんですか?」

しかし戦いの波は容赦なく全てを飲み込んでいく。
その波が井上を巻き込んでいく事をこの時の川島はまだ知らない。

44 : ◆L2gLDbsqeY :2006/08/29(火) 22:20:39
以上です。
時期的には麒麟の田村が石の力に目覚めた直後
まだ井上が石を手にしていない頃の話です。



45 :名無しさん:2006/08/30(水) 12:19:50
井上 川島編 乙です!
田村優しい、井上も偉大な変人っぷりで・・・

46 :名無しさん:2006/08/30(水) 15:53:31
乙です!
天然井上最強ですねw

47 :名無しさん:2006/08/31(木) 09:15:58
井上カッコヨスw
でも途中乱入ヒドスww

48 :名無しさん:2006/08/31(木) 13:25:16
乙です!
この先戦いでどう絡んで行くか楽しみですね

49 :名無しさん:2006/08/31(木) 17:12:32
下がりすぎなのでage

50 :49:2006/08/31(木) 17:13:49
メ欄消すの忘れた…
今度こそage

51 :名無しさん:2006/08/31(木) 18:39:26
なんでageる必要があるんだよ

52 :名無しさん:2006/08/31(木) 18:58:52
>>51
>>49
下がりすぎと書いてあるのが読めないのか

53 :名無しさん:2006/08/31(木) 19:14:47
下がりすぎると何か大変なことが起こるの?

54 :名無しさん:2006/08/31(木) 19:17:30
>>52
テンプレにsage必須書いてあるじゃん

55 :名無しさん:2006/08/31(木) 22:59:41
>>53
スレが落ちる

56 :名無しさん:2006/08/31(木) 23:00:56
>>55
thx。それは困る。

57 :名無しさん:2006/08/31(木) 23:06:37
散々既出だが1レス/24hあれば700前後でも落ちる事は少ない
祭りでスレ乱立でもすれば話は別だが

58 :名無しさん:2006/08/31(木) 23:20:01
ageなくて良かったのか

59 :名無しさん:2006/09/01(金) 00:08:32
まだageなくて良かったね
やるとしても人のいない時間帯が良い

60 :名無しさん:2006/09/01(金) 00:11:23
まだというか普通にageなくて良かったんだろ

61 :名無しさん:2006/09/01(金) 00:59:53
乱立しても???バカか。

62 :名無しさん:2006/09/01(金) 06:00:28
乱立してませんよ

63 :名無しさん:2006/09/01(金) 22:16:29
。゚(゚*´Д⊂グスン

64 :名無しさん:2006/09/02(土) 23:58:33
保守

65 :Phantom in August  ◆ekt663D/rE :2006/09/04(月) 00:55:21
前スレ >>878-883 の続き

【23:35 渋谷・某病院】

記憶を反芻するかのようにぽつりぽつりと村田が語るその最中で、それに最初に気がついたのは、赤岡だった。

「………っ!」
にわかにロビーの椅子から立ち上がり声にならない声を上げる、その視線の先には、三人の人の姿。
そのうち二人は点滴台と仲良しのようで、残り一人…彫りの深い顔立ちの長身の男が、不安げに彼らに付き添っているようだ。
「おぅ、終わったか。」
赤岡につられるように顔の向きを変え、三人の姿を捉えて。村田は一度喋るのを止め、安堵の溜息と共にぼそりと声をかける。

「……何、どないしたん、これ。」
点滴台を引きずりながら、三人の内の一人…松丘が素っ頓狂な声を上げた。
腕に繋がっている点滴の管はもちろん、手当てのためとはいえ腕や顔を覆う包帯やらガーゼやらが何とも痛々しい。
「わかりやすく言えば人気者やっちゅー事やな。お前らが、と言うよりもお前らが逢ぉた奴が、やけど。」
以前は頻繁に、しかし今は久々に見る顔が並んでいる事に、驚いたように目を見開く松丘に村田は告げる。
「…『白い悪意』、ですか。」
点滴台に体重を掛けながら、もう一人の怪我人…平井がおそるおそる村田に訊ねた。
そういう事、と頷いて返す村田に、平井は改めてこの場にいる面々の顔を見やり、ふぅと息を吐いた。
ずっと一人で戦っていたから、そんな実感はなかったと言えばそれまでだろうが。
こんなにも多くの芸人の手に力のある石は渡っていて。
そして彼らは突如として現れた『白い悪意』に対して脅威を感じ、何とかしようと考えているのだ。

…それができるなら、何故『白』と『黒』はずっと争っているのだろう。
それこそ何とかして、戦いを終わらせる事は、できなかったのだろうか?

その態度を頼もしいと思うのと同時に、そんな疑問が平井の内側でわき起こる。
確かに、多くの者が石に関われば、その分ややこしくなるだろう事は容易に想像できるけれど。
それでも。

66 :Phantom in August  ◆ekt663D/rE :2006/09/04(月) 00:56:19
「そういう事。 で…その格好からすると、お前ら、今夜は泊まりか?」
「あ、はい。点滴もありますし、運良くベッドが空いてるそうで、そこで泊まってけと。」
村田の問いかけに、彫りの深い顔の男…平井負傷の報に慌ててシアターDまで引き返してきたイヌがニャーと泣いた日の
わかやまZこと中岸 幸雄が答えた。
目の前のそうそうたる面子に少し身が引けているような中岸の口振りに村田は幾らか微笑ましげに目を細めて。
「じゃ…さっきお前らが教えてくれた事、代わりにしゃべっといてやってるから。さっさと休んでこい。」
「でも……。」
「エェから、行け。」
せっかく久々に顔を合わせたのだ。少しぐらい懐かしあったりしてもいいじゃないか。
そう言いたげな表情をにわかに浮かべる松丘に、村田はぴしゃりと言い放つ。

その口振りが、相方に向けると言うよりも、かつての後輩に向けるような高圧的なそれであった事に、
口に出してから気づいたか、反省するように村田は小さく舌打ちをして。
「別に意地悪で言うてる訳やないんだ。回復魔法かけられた…言うても、その傷、やろ?」
フォローするかのように言葉を続ける。
「……………。」
「そうだな。少しでも休んだ方が良い。」
村田の言う事はもっともであろうが、それでも不服げな目で見返す松丘に、不意に低い声が、かけられた。

声の主は、土田だった。
ホリプロコム勢の中に気配を消して混じり込んでいた部外者の突然の発言に、松丘達のみならず
回りの井戸田達も思わず彼の長身を見上げてしまう。
「…ただの怪我じゃ、ないんだからな。」
ぼそりと告げるその言葉に、小沢は思い出す。『白い悪意』と交戦した石の使い手達がその後どうなっていったかを。
今は、運良くも意識を保てているようだったけれど、ここで無理して彼らのようになってしまってはならないはずで。

「…だな。今は休むべきだ。そこののっぽ。二人を頼む。」
土田に続いて設楽も口を開いた。同時に微かに、彼の周囲で石の気配がわき上がる。
彼のソーダライトが秘めているのは『説得』の力。
かなり失礼な呼ばれ方をしたにもかかわらず、中岸はこくりと頷くと、傍らの怪我人二人を促しだした。

67 :Phantom in August  ◆ekt663D/rE :2006/09/04(月) 00:56:56
「…あ、赤岡っ!」
まだ残念に思う気持ちはあるけれど、そこまで言われるなら…と渋々歩き出して、数歩。
不意に松丘は立ち止まると、集団の中にいる一人へと、呼びかけた。
「………っ」
その声に弾かれたようにビクリと反応する赤岡に、松丘はブレスレットの揺れる右手を掲げ、
包帯やらガーゼやらで覆われた顔に柔和な笑みを浮かべて、告げた。

「…石、預かっててくれて、ありがとうな。」
「………はいっ!」
一言そう告げれば、あとはずるずると廊下の方へと引っ張られていくばかりだったけれど。
その松丘の背中を、もしかしたらその一言が聞きたいが為にここまで着いてきたのではないかと思わせるほどの
心からの安堵の表情で、赤岡は見送る。



やがて今夜の殊勲者の気配は辺りから消えて。
一度『白い悪意』に関する話が途切れた事を良い事に、周囲の視線は自然と赤岡へと集中した。
「…預かってるって、何の事だよ。」
「そのままの意味です。」
問いかける井戸田に赤岡はぼそりと答えて、設楽の方へ彼にしては露骨に冷ややかな視線を向ける。
「去年の秋…誰かさんが、満身創痍なあの人の石すら奪わせようとしたから。」

きっぱりと言い切る赤岡の言葉に、土田がぷっと吹き出し、設楽はにわかに渋い表情を浮かべた。
「……一応、止めとけとは言っといたんだけどなぁ。追いつめられた奴は何するかわからないから。」
そのまま口振りだけは他人事のように設楽は呟き、肩を竦める。
「それで知らない誰かに奪われるぐらいなら、僕にやる。その代わりまた強く光りだしたら必ず返せと…そう言って
 虫入り琥珀と一緒にあの人の石を…サーペンティンを預かったんです。」
やっぱりですか、と言わんばかりに設楽を見やりながらも説明する赤岡の脳裏に浮かぶのは、風の強い夜の出来事。

68 :Phantom in August  ◆ekt663D/rE :2006/09/04(月) 00:57:50



 『テンションを上げて』 
 『もっとテンションを上げて』
 『最高にテンションを上げて』
 『石を、暴走させろ』

普段は他者へ向ける石の力を己に向けて用い、あの秋の初めの出来事から日々輝きを失っていく石を無理矢理に煌めかせて。
黒く汚染された輝きを放つ石の持ち主達に立ち向かっていく、松丘の背中を。
まだ自分の石である黒珊瑚の力を使いこなせていなかった赤岡にはただ見ている事しかできなかった。

――力が、欲しい。 誰かを…それ以前にまず自分達を守るために強い力を持つ石が欲しい。

その時の強い焦燥感が、しばらく赤岡と島田を誤った道に踏み込ませたりも、した。
結果、小沢達のお陰で目が覚めて。虫入り琥珀や色々収集した石は手放した、けれど。
それでも彼に必ず返すと約束した、旅人を守ると言われる緑色の石だけは、こっそりと手元に置き続けていたのだ。




「それで、約束通りあの人に返して…こんな事になって。
 まだ渡すには早すぎたのか、それとも良いタイミングだったのか。僕にはわかりませんけれど。」
そう説明を取りまとめて、赤岡はふぅと息を吐いた。
「それよりも今は『白い悪意』です。それで…どうなったんですか?」
そのまま設楽に向けていた視線を村田の方へ向け、問う赤岡に。ようやく話題が元に戻ったかと村田は小さく頷いて、おもむろに口を開いた。







69 :Phantom in August  ◆ekt663D/rE :2006/09/04(月) 00:58:49
【22:08 渋谷・センター街】

非常階段を一段一段上り詰め、一番石の気配が濃く漂う最上階の踊り場に出て。
白いパーカーを羽織った男…『白い悪意』は、そこに先ほど見た芸人の姿がない事に気づく。
あるのは、階段にバランスを取って置かれてあるもはや卓上カレンダーほどのサイズになったスケッチブックのみ。
『お疲れさま!』
これ見よがしに書き付けられた、かろうじて読み取れるその文章は、わざわざ非常階段を昇ってきた彼に対してのモノか、
それとも相棒として長年付き添ってくれたスケッチブックに対してのモノか。

「……………。」
不意に外で石の気配が発されるのを感じ、『白い悪意』はビルの外の路上に目を向ける。
そこには自分が追いかけていたはずの、二人の芸人の姿。
石によって呼び出されたモノだけあってそれ自体が石の気配を色濃く放つスケッチブックの紙…松丘言うところの『撒き餌』につられて
『白い悪意』が非常階段を上ってくるのに合わせ、彼らはタイミング良くエレベーターで一気に地上へと逃げたのだ。

チッと舌打ちすると同時に、『白い悪意』は右手を取り残されたスケッチブックの方へ向ける。
掌に白い光が生まれると同時に、スケッチブックはその場から弾き飛ばされて壁にぶつかり、緑色の光の欠片になると『白い悪意』を包み込んだ。



  『ねぇ、……さん、……さん、見てください!』
完膚無きまでにスケッチブックを破壊して、ようやくわずかに満悦げな表情をフードの下に覗く口元に浮かべる
『白い悪意の』耳に、不意に弾むような声が届く。

70 :Phantom in August  ◆ekt663D/rE :2006/09/04(月) 00:59:56
  『ようやく俺らにも石、回ってきたんですよ!』
  『えー、ずりぃ! 何で俺じゃなくてお前らなんだよ!』
  『何やろなぁ…年齢分補正が掛かったンちゃうん?』
  『でもずりぃよー。年功序列なんて聞いてねーしー!』
  『…ふて腐れない。……くんは若いんだし、きっと次ぐらいに格好良い力の石が回ってくるでしょう。』
  『そうかなぁ? うん、そうだな。そうに決まってる!』

何だろう、この声は。
そう思うと同時に、次々と様々な、そしてどれも聞き覚えのある声が『白い悪意』の耳に飛び込んでくる。

  『…相変わらず……は単純やなぁ。』
  『それよりも…お前ら、その石にどんな力があるかはわかってるのか?』
  『いや、まだ…とりあえず拾ったばかりやけど報告しとこ思て。』
  『そう。ちなみに……さん達には?』
  『あの人達にはこれから報告しに行きます。』
  『ま、多分あの人達も言わはると思うけど…みんなを守る事以外に石を使って戦ったらあかんぞ。』
  『……はいっ!』

「これは………僕は…一体……。」
『白い悪意』の口から、独特の語尾を跳ね上げるイントネーションを含んだ呟きが漏れた。

――あぁ、覚えている。
この頃、僕らはお笑いバブルのただ中で。
いつバブルが弾けるかという不安はあったけれど、それでも仕事はあったし、僕らなら昨日よりも今日、今日よりも明日を
何とかちょっとずつ良いモノにしていけると漠然と思っていた。
まさか、やがて道を分かち、道に迷い、道を踏み外し、道半ばに倒れながらもまた歩き出す未来が来るだなんて、
予想だにしていなかったんだ。
今となっては甘酸っぱい…いや、しょっぱい昔の思い出。しかし、何故、こんな事を思い出してしまうのだ………?

僕は……僕は………僕は………………



71 :Phantom in August  ◆ekt663D/rE :2006/09/04(月) 01:00:35
「…………芸人を、滅ぼす。」
ズキズキと痛み出すのか頭を両手で押さえ、ぽつりぽつりと呟きを漏らす『白い悪意』の口振りから
不意にイントネーションが消え、流暢な標準語が紡がれる。
同時に彼の周囲から強い石の力が放出され、それは路上にいる二人の元へも届いた。





「…ちょっと怒らせてもーたかな。」
引きつるような笑みと共に松丘が呟く声を傍らで聞きながら、平井は胸元の首飾りに手をやる。
これから始まるのは自分達の居場所…『城』の防衛戦。
けれど意外と、今の彼に恐怖はなかった。
ただ、『白い悪意』のいる雑居ビルの最上階の踊り場を、じっと見据えていた。

すると。
白いパーカーを着た男が踊り場の所に姿を現したかと思うと、ひょいと塀を乗り越えてくる。
もちろん、塀の外側に足場などあるはずもなく、男の身体は重力に引かれて真っ逆さまに落ちていく。
どう見ても自殺です。本当にありがとうございました。

「………っ!」
違う。
落下しながらも『白い悪意』は石の力を急速に発動させていき、それに比例するかのように、落下速度が減少していく。
身構える事も忘れて見入る二人の目前で、白いパーカーの男は…『白い悪意』は軽やかにアスファルトに着地した。

「……舐めた真似を。」
してくれたな。
そう告げ終えるよりも早く、『白い悪意』の周囲から放たれた白い光が路上を走り。
松丘の身体をそれまで立っていた場所から数mほど後方へと弾き飛ばしていた。

72 :Phantom in August  ◆ekt663D/rE :2006/09/04(月) 01:06:40
今回はここまで。
なお、この話は2005年8月を舞台に設定された物です。
そして今回で松丘さんの旧式の能力は登場しなくなるので、一応まとめておきます。


松丘 慎吾 (坂道コロンブスVer.)
石:サーペンティン (蛇紋石。黄色がかった緑の石。「旅人を守る石」)
能力:石の力で呼び出したスケッチブックに指示を書き、相手に見せる事で相手を指示に従わせる。
  相手が従う時間は数秒ほどなので、難しい内容の指示は不可。
  また、呼び出したスケッチブックは石の力で出来ているので、ちょっと頑丈。
条件:相手の目に指示が見えていないと効果は発揮できない。

73 :名無しさん:2006/09/04(月) 18:25:40
乙乙です!

74 :名無しさん:2006/09/04(月) 19:29:12
乙!
でも真面目なシーンで笑かすなww

75 :名無しさん:2006/09/04(月) 20:35:34
乙です!
「どう見ても〜」ワロスwww

76 :名無しさん:2006/09/05(火) 00:02:19
バトロワスレ(したらば)で麒麟が見てるってテレビでいってたって書き込みがあったから
このスレも見られてるかも知れぬな。

77 :名無しさん:2006/09/05(火) 01:02:47
乙です。続きが今から待ち遠しいよ
>>71普通にびっくりしたじゃないかw

78 :名無しさん:2006/09/05(火) 13:39:33
乙です!

79 :名無しさん:2006/09/05(火) 19:14:52
>>76
いや普通に2・3人くらいには見られてると思うぞ。
テレビに出る度に2ch見に来る芸人もいるって聞いたことあるし。

80 :名無しさん:2006/09/06(水) 22:43:48
乙です

81 :名無しさん:2006/09/07(木) 23:42:07
下がり過ぎage

82 :名無しさん:2006/09/07(木) 23:55:01
hosyu

83 :名無しさん:2006/09/08(金) 23:48:00
保守

84 :名無しさん:2006/09/09(土) 17:04:04
age

85 :名無しさん:2006/09/09(土) 18:15:35
圧縮について説明。
スレッドの総数がサーバーの圧縮規定値に近づくと(お笑い芸人板は800)
圧縮が行われスレ総数が700程度になります。
その際dat落ちになる基準ですが、最後に書き込みがされたのが古い順
最下部でも関係ありません。保守するためにageてもsageても一緒です。
毎日書き込みがあればまぁ落ちることはないでしょう

86 :名無しさん:2006/09/09(土) 23:07:35
>>85
そうなんですね。情報ありがとうございます。

87 :名無しさん:2006/09/10(日) 00:20:36
必死だな

88 :名無しさん:2006/09/11(月) 09:32:54
age

89 :名無しさん:2006/09/11(月) 17:09:04
保守

90 :名無しさん:2006/09/12(火) 06:50:48
保守

91 :名無しさん:2006/09/12(火) 21:35:35
age

92 :名無しさん:2006/09/13(水) 00:54:53
hosyu

93 :名無しさん:2006/09/13(水) 19:24:30
保守

94 :名無しさん:2006/09/14(木) 22:20:00
ほしゅ

95 :名無しさん:2006/09/14(木) 23:15:11
殺伐ぎみなのでage

96 :名無しさん:2006/09/15(金) 13:09:28
hosyu

97 :名無しさん:2006/09/16(土) 10:24:37
保守

98 :名無しさん:2006/09/17(日) 10:56:06
本スレは小説投下だけでいいのですか?
保守ばかりで気になったので書き込んでみました。

99 :名無しさん:2006/09/17(日) 11:14:52
続けて書き込みます。
現在、したらばには

廃棄小説投下
ゲーム化計画
新登場芸人キボン!!
小説練習
新しい石の能力を考る
芸人AA・顔文字で物語を作る
石スレ、感想・要望
小説作成依頼
小説時間・時期確認
白&黒ユニット編進行会議

のスレがあります。
では本スレに何が出来るのでしょうか。
それはこの話の完結です。
本スレではこのことについて話し合ってはどうでしょうか。
長文スマソ

100 :名無しさん:2006/09/17(日) 12:59:45
お前鬱陶しい

427 KB
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